
夏の夕暮れから夜を潮風にあたりながら酒とジャズに酔いしれるひととき。そんな洒落た大人のジャズフェスが僕の実家、神奈川県の葉山町で開かれました。実家に長いこと住んでいなかったので知りませんでしたが、毎年夏に行われるようになってすでに4回目らしいです。
それにしても上記出演者はジャズ好きなら驚きの凄い人たちばかり。これ、東京でもなかなか見れない人けっこういますね。佐藤博なんて知る人ぞ知る伝説の(というか一般的には知名度ないというだけ?)ミュージシャンで、今回も急に出演決まったとかでほんと驚いた。(昔の山下達郎のバックでピアノ弾いていたりします。僕の学生時代から本人のアルバムもけっこう出ていたのだけれど売れてなかったなあ)
葉山マリーナの中に湘南ビーチFMという放送局があります。それこそ中山美穂が出ていた映画「波の数だけ抱きしめて」のFM局そのまま。海の見えるスタジオがあり、そこの社長があのキャスター木村太郎氏なんですが、彼がヨットとジャズ好きらしい。それで葉山では毎週、海の見えるレストランでそのFM曲主催のジャズコンサートが開かれており今回は毎年一回のスペシャル版。
なんといってもお客が1200人だけ。これは野外で聞くコンサートしてはとても贅沢ですね。しかも後ろ半分はテーブル席でお酒を飲みながらライブハウスのように聞けちゃう。これぞリゾートの醍醐味といったところ。ちなみに隣町にある逗子マリーナではこの日、ユーミンのコンサートがプールサイド(やはり海に面した場所)であり、1日7500人で4日間おこなわれました。それと比べても意味ないけど、葉山のほうは子供がまったくいない余裕のある場所で、流れている空気も時間もゆったりとしたシックで大人のコンサートでしたね。とにかくジャズ好きの僕にとっては天国のようでした。
5時半、アコースティックの心地よいサウンドでコンサートは軽やかにスタート。リゾートミュージックと言えばこの人たちというギターデュオGONTITI。まさにマリーナに吹く爽やかな風といった心地よさ。白のスーツにで登場した二人とパーカッションだけというシンプルな構成ながら見事なアンサンブルを聞かせてくれます。テクニックだってかなりのもんです。僕には夏といえば有名なあんなバンドなんかよりずっといいなあ。そう、僕らのテーブルではすでに冷えた白ワインが2本空いておりました。極楽極楽。
あたりはだんだんと日が落ち夕暮れのいいムード。そこに僕が一番期待の熱帯ジャズ楽団が登場。しょっぱなからトランペットのハイトーン炸裂。なんたってあの名曲「アイアンサイドのテーマ」がいきなりですからのけぞりましたよ。ホーンセクション含め19人の大所帯バンドのリーダーカルロス菅野はオルケスタデラルスでも有名だったパーカッショニスト。ベースは松岡直哉グループでおなじみ高橋ゲタ夫。そしてドラムはポンタと人気を二分するあのテクニシャン神保彰!!この凄腕リズム隊に抜群のきれをみせるホーンセクション。あたりは一気にラテン一色に染まりました。夏、海、リゾート、夜、ときたらラテンですよ。もうとびきりホットでクールなグルーブ。(なんだそれは)まあ、のりまくりの演奏でビール片手に踊っていた客もけっこういましたねえ。これぞ野外ジャズフェスの醍醐味です。アースウィンドファイアーの名曲「セプテンバー」で会場は興奮の坩堝。まいったね、こりゃ。ビッグバンドってどうも古臭くて嫌いなんですが、ラテン系だけは大好き。まだまだ聞いていたいのですが次へというわけでアンコールはなくこのセット終了。もうこの時点で僕らはけっこう飲んでおりましてテーブルにはビール、ワイン白、赤いろいろ並んでおりました。
7時をまわり夜になったところでご存知ポンタボックス登場。上記のように出演予定のなかった佐藤博がいきなり登場してあの独特のロックブルース調のピアノを聞かせてくれ、僕は一人感動しておりました。ボーカルはあんまり上手くないんですけどね。これも味といえば味ということで。
ポンタボックスは佐藤博が2曲やった後トリオで演奏。これが凄かった。感動ものだったのがジャコパストリアスの「おまえのしるし」をバカボンのベースで聞けたこと。この人名前はふざけてますが、演奏は日本の宝というぐらいのジャズベーシストであります。テクは当然ながらインプロビゼーションの発想、きれにもの凄いものがあり鳥肌ものでした。もちろんポンタのドラムは絶対的安心感で文句なし。佐山ももはや大家といった趣のジャズピアニストでスリリングなアドリブを聞かせてくれました。このトリオ、今きれのよさでは世界的に見てもトップクラスかも。これもトリオだけでもう一度じっくり見たいと思いました。
もうこの三人だけですっかり酔いしれている(酒のせいだけじゃない)ところに南佳孝登場。茅ヶ崎に住んでいるということで湘南の住人だったのですね。これはもう余裕の大人のサウンド。ポンタボックスもゆったりとサポートしているようでとても心地よいサウンドが夜風にのります。南佳孝は渋いの一言につきますね。無理のないゆとりだけが生む音楽とでもいいましょうか。ルート66を余裕のブルースフィーリングで歌いすっかりリラックスさせてもらいました。
ここで先に村田陽一がトロンボーンででてきて数曲演奏した後にいよいよ渡辺香津美登場。いきなり1曲目に衝撃が。なんとあの伝説のバンドKYLYNからINNER WINDをやったのです!KILYNといえば今から約20年前、ギター渡辺香津美、ドラムポンタ、ベース小原礼、キーボードになんと坂本龍一、ピアノ矢野顕子、サックス本多俊之、清水靖晃、トロンボーン向井滋春、パーカッション ペッカー、という今をときめく人たちがアルバム2枚だけ出した幻のバンド。僕が中学の時にジャズを聞き出した頃、めちゃくちゃに衝撃を受けたバンドでした。坂本もまだYMOの初期だったのでそんな人気はなかったですが当時から一部で評判のバンドだったのです。ライブもライブハウスで数回やっただけらしくこのバンドを生で聞いた人は当時でもごくわずか。そのバンドの名曲がまさか聞けるとは。
実はいっしょに聞きに行っていた仲間の一人吉塚君と演奏前に冗談で、KILYNの曲演奏してくれないかなあ、と話していたので本当に驚きました。ですので吉塚君なんて涙がでたと言っておりました。
ポンタと香津美ってありそうであまりない組み合わせ。そりゃそうですよね、香津美は東原力也とバカボン鈴木とレゾナンスボックスというバンドをやっていたので、今回はさしずめポンタレゾナンスボックスといったところ。
2曲目もKYLYMからでMILKY SHADE。村田陽一のトロンボーンが当時の向井滋春を思い出させる演奏でほんと涙ものでした。
そのあと香津美はリゾートということもありベンチャーズメドレー!?などもやってくれ大サービス。これがお祭りならではということでなかなか楽しかったです。
そして香津美が終わり休憩後に吉田美奈子がおおとりを務めます。あの独特なソウルフルな声でジャズを歌う。うーんこれはなんとも情念的なというか、納豆のようにねばるジャズ。僕はちょっと好きになれなかった。ポンタボックスと吉田美奈子はアルバムを出したらしいですが、吉田美奈子はブラックソウル系の方がしっくりくるように思います。あまりに粘っこい表現なのでリゾートのジャズというにはどうも重過ぎる。しかもバックの演奏の軽快さとはちぐはぐな感じがしてしまうのは僕だけでしょうか。スタンダードナンバーばかりですので飽きはしないのですがキャラバンという曲もアレンジ含めおどろどろしい雰囲気がただよい真夏の夜に幽霊が(吉田さんを言っているわけではありません)でてくようでした。これは好き好きなんですけれどね。
まあそれでもラストはそれなりに盛り上がり素晴らしい真夏のひとときは10時半を回りフィナーレとなったのです。僕らはほんとに気持ちよく音楽に浸り酒もしこたま飲み幸せな顔で、来年もまた必ずここでと約束して葉山マリーナを後にしたのでした。
08/18/2000 12:05:07